輝子と瑠衣(井上荒野)を読んだ

たのしく読む

輝子と瑠衣、70歳の女性たちの逃避行の話です。

二人はそれぞれ、モワハラの夫や息苦しい老人ホームから逃げてきたのですが、それが破天荒なんです。

もともと瑠衣は、自分の気持ちに正直に生きてきた女性です。だからお金もない。

最初の結婚でそこそこ幸せに生きてきて子供までいたのに、その時に出会った男に惹かれて家庭を捨ててしまうのです。その男は事故で死んでしまい、瑠衣は一人で歌を歌って生きてきました。

全くの負け組。

輝子だって、いいところの奥様ではあったけれど、夫は、別に彼女がいた時期もあり、輝子に冷たく当たり、苦しい結婚生活を送っていました。こっちは隠れ負け組。

二人は同級生ではあったけれど、そう仲がいいわけではなかったのです。だって、自分の思いに正直に生きる瑠衣と模範生の輝子が合うわけがないですもの。

たまたま同窓会に出て、二人は出会います。それから、二人は意気投合し、どうちらかというと輝子を類が支えてきたのでしたが、瑠衣が老人ホームを飛び出してSOSを出した時は輝子が瑠衣を支える側になります。

しかし、破茶滅茶なんですよ、二人の生き方は。

瑠衣の生き方はもともと軌道を外れていたけれど、70歳の輝子はもっと軌道を外れている。見知らぬ人の別荘に潜り込んで暮らしていくんですが、でも、リアリティがあって、読者は妙に納得してしまうんです。

もしかすると、輝子は真っ当な方法で夫と離婚し、きちんと手続きをすれば、人の別荘に住まなくても、瑠衣と人生を歩んでいけたかもしれないのに、ほんと、輝子は無茶なことばかりします。

だけど、いや、だからこそ、この二人の生き方には希望があるんです。

私もそろそろ、今まで続けてきた仕事から別のステージに移る時期に差しかかってきました。

引退、というわけではないけれど、後進のことも考えなければならない時期です。

これからはもっと、自分の行く末を悩むこともあるのではないかと思います。

そんな私に、この「輝子と瑠衣」はいろいろな希望を示してくれました。

本の表紙も素敵。

「テルマ&ルイーズ」の映画と通じる小説だそうです。

その映画を見たのかどうか、もう忘れてしまいましたが、衝撃的な内容の映画だそうです。でも、この小説も、十分、スリリングで、読んでいて開放感がありました。

皆さんも、ぜひ。

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