「うらはぐさ風土記」(中島京子)を読んだ

たのしく読む

離婚を機に日本へ帰ってきた主人公沙希。コロナ禍が収まったが、世の中は人とのつながりが希薄になって、住み始めたうらはぐさ地域も然り。

ここは武蔵野の一角である。都会の様相もありつつ、自然がまだ残っている場所。野生の小鳥たちが沙希の住む家の庭にやってくる。

この、自然が残るという状態を、小さな家の庭の佇まいや鳥たちの姿で語られるところが、また、素晴らしい。

沙希も残りの人生が少しずつ見えてきて、悩むことも多いのである。

そんな中、この地域に住む少し変わった人たちが少しずつ関係しながら生きていく物語である。

うらはぐさの歴史と人々との交流はちゃんと関連していて、不思議な縁で結ばれていく。

いや、歴史があるから人は関係し、関係するから歴史が生まれてくるのではないか、と思わされる物語である。

なるほど、この小説のタイトル「うらはぐさ風土記」なる理由もそこにあるのだ。

人生には物語が必要だと、確か、心理学者の河合隼雄さんが言っていたような気がするが、その意味がわかるような小説だった。

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