伊勢市にある朝吉旅館に宿泊しました。
伊勢神宮の内宮と外宮の中間に当たるところにある旅館です。
江戸時代から続いているとかで、古い日本家屋の様相を残して情緒があり、特に日が暮れてからの相貌は一見の価値があると思います。200年も前からの建物の多くの文人や著名人が訪れておらえ、その方々の色紙も多く残っていました。宇野重吉さんなどの名高い俳優さんたちも宿泊されていたとのこと。宿は少しずつ改築されていますが、階段や廊下は当時のそのままと思われるところもあり、艶光りしています。多くの人が歩いたせいでしょうか。
アニメ「千と千尋の神隠し」の旅館の雰囲気があって、お膳を運ぶ女の人たちの騒めきのようなものが漂っていました。そういえば、以前に使われていたようなお膳のいくつかが廊下の隅にあり、資料館もあって、そこには200年の歴史が確かに存在していました。
旅館のある場所は「古市」というところで、東海道膝栗毛に出てくる弥次さん喜多さんも訪れたとされる地域です。江戸時代はお伊勢参りをした後の精進の落としをしたところで、大いに賑わったそうです。
旅館の方によると、近鉄が開通するまでは水上交通の要所でもあり、参拝客や行商の客などに利用されていたとか。当時のお客は、徒歩や人力車でやってきたとかで、そう考えると、当時の人々は麻吉旅館の灯りを見て、どんなにホッとしたことかと思います。
旅館の灯にそんな哀愁を感じながら、一晩を過ごしました。
時々、電車の音が遠くに聞こえます。近鉄の五十鈴川駅が近くにあるようです。電車に乗り降りする人々も、以前なら、この宿などに泊まりながら行き来しておられたのかな、と思うのも感慨深かったです。
いにしえと交錯する旅館、それが麻吉旅館でした。